かつては10km以上離れた山形駅まで、他人の土地を通らずに行けた。
そんな伝説さえ残る大地主、柏倉九左エ門家。
現在でも4000坪の敷地に360坪の建物。長屋門より黒板塀を廻らし、2つの蔵と2つの蔵座敷、3つの庭園、そして前に蓮池・後に裏山を備えるといった威容を誇る。
この柏倉家、最大の特徴は「現役の屋敷を公開」している点だろう。
公開されている豪農の館は、日本中にあまた存在する。
どこも立派なものだがほとんどは空き家。そこでどんな暮らしが営まれていたのか それを想像するのは難しい。
いかに昔の道具を整然と展示していようとも、だ。
だが、ここ柏倉家は違う。
現在も第16代の当主がここに起居し、老使用人と共にこの家を伝統の生活様式ごと守り伝えているのだ。
ただ、今の世の中でこれだけのものを個人で保全するのは困難。
存続が危ぶまれた事もあるが、近年NPO法人「柏倉家文化村」が発足し、当主らと力を合わせて維持管理を行っている。
何としてもこの家と伝統を守りたい、というこれらの方々の尽力には頭が下がるばかりだ。
そう、残されているのは昔の建物だけではない。
ここにあるのは「心」。受け継がれてきた日本の魂と文化です。
節句ごとの行事、自然の恵みに感謝する生活、佛への篤い信仰心。
博物館的な民家では感じられない、日本人の魂をゆさぶる感覚。
それを実感できるのが、柏倉九左エ門家の大きな魅力だ。
もちろん、家屋、調度品、庭園も素晴らしい。
東本願寺を模した造りの21畳の仏間、こて絵の見事な蔵、総うるし塗りのお風呂、池山水の庭園ほか、見どころは枚挙に暇がない。
また、四季折々に季節の花や紅葉、雪化粧によって表情を変える。
そこに「展示」ではなく「行事」として行われる伝統の室礼。
更に贅を尽くした香道、華道、茶道の道具類と、それらのイベント。
訪れるたびに、「日本はいいなぁ」と思わせてくれるでしょう。
多くの日本人が忘れかけている、忘れてはならない大事なもの。
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